「地球号の危機ニュースレター」535号(2025年4月号)を発行しました。

地球環境センターに「二国間クレジット」を聞く やはりほぼ日本だけの制度 地球全体での削減を目指せ

モンゴル・ウランバートル近郊にシャープが建設した15MWの太陽光発電所 © 井田均

モンゴル・ウランバートル近郊にシャープが建設した15MWの太陽光発電所 © 井田均

井田 均(市民エネルギー研究所)

二国間クレジット制度を知りたい

 2025年1月下旬に地下鉄丸ノ内線本郷3丁目駅に近い公益法人地球環境センター東京事務所を訪れた。二国間クレジット制度について知るためだ。事業第一グループの企画官、石原雅美氏と総括主任の小村陽平氏が応対してくれた。

 この「二国間クレジット制度」とは、日本の事業者が、契約している海外の発展途上国に、地球温暖化を妨げる効果がある太陽光発電所などの設備を建設した場合、建設費のうち最大50%を日本の国庫から補助金を支給するという制度だ。国土が狭く、広大な土地を必要とする太陽光発電などの事業は、日本国内には建設しにくい。それよりも広い未利用の土地がふんだんにある国にそういった施設を建てる方が効率的だ。温暖化防止は地球規模で考えるべきであるという考えに基づくものだ。

 私はかねてからこの「二国間クレジット制度」について、いくつかの疑問を感じていた。それは、

  1. この制度を導入しているのは我が日本だけではないのか。
  2. 日本の事業者は海外の発展途上国にこの種事業を展開した方が楽だし、その上かなり多額の補助金も得られるので日本国内での事業を放棄して海外へ顔を向けているのではないか――主にこの2点だった。

私が事前にメールで送付していた質問は、

  1. そもそもこの制度を発案したのは、どこの国の人ですか。日本人ですか。もし日本人だとしたらどこの省庁の人かもお教え頂きたいです。
  2. 御団体、地球環境センターが海外の発展途上国にこの事業を推進されているのは、日本国内よりも温暖化ガス排出削減策を効果的に進めやすいからではありませんか。
  3. 2011年から各国との協議が始まり、2016513日に最初のクレジットが発行されたが、近年のクレジットの発行条件は、建設事業者側のメリットが次第に減少する方向なのではないでしょうか。変化の状況を教えて頂きたいと思います。
  4. CO2などの地球温暖化物質の削減量は、施設を建設した日本と土地を提供した発展途上国との間でどの様に配分されるのですか。 

4点だった。

やはりほぼ日本だけの制度

 最初は、石原雅美氏がセンターの紹介ビデオの映写を始めた。一般的な話が続いて私が聞きたい内容とは多少ズレていた。

 5分か10分が経った頃、シビレを切らした私が、「いくつかの質問をメール送付いていますので、それに従ってお話をうかがえませんでしょうか」と言ってみた。

 まず聞いたのは、質問1で聞いていた、「この二国間クレジット制度」を発案したのは何処の国の人かということだ。

 答えはやはり日本人だという。環境省などの日本政府だという。

 「やはりそうだったのか」と思った。

 しかし私が、「日本だけが採用している制度」と言ったら、石原氏と小村氏が同時一斉に「日本だけではありません」と言った。

「では他にどこの国が採用しているのですか」と聞くと、小村氏が「スイスとシンガポールです」と答えた。

「スイスは私も聞いたことがあります。ただ1年か2年前にきいたのは実施された件数がわずか1件だという事でした。これは日本の昨年秋までの252件と比べてもはるかに少ない。シンガポールというのは初耳ですが、何件ほどでしょうか」と聞いてみた。

 すると小村陽平氏は「国名は分かっていますが詳細は不明です」と答えた。

補助金の率は一部で減少傾

 次に私が、質問2として送付した、海外の発展途上国の方が日本よりも温暖化ガス削減に大きい効果が期待できると考えたのではないか、という点だ。

 これに対しては、石原氏が先ず「JCM(二国間クレジット制度)設備補助制度の公募要項」を見せてくれた。

 そこには、「本補助事業は、JCM(二国間クレジット制度)の活用を前提として、途上国等において優れた脱炭素技術等を活用してGHG(Greenhouse Gas=温室効果ガス)によるクレジットの獲得と我が国の削減目標達成への活用を目指すものです。

 また『環境省脱炭素インフライニシアティブ(令和36月環境省策定)』、『地球温暖化対策計画(令和310月、閣議決定)』、『環境省COP26後の6条実施方針(令和311月、環境省発表)』、『新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画・フォローアップ(令和46月、閣議決定)』等に沿って、パートナー国のニーズを深く理解した上で先進的な優れた脱炭素技術等を普及・展開することにより、世界の脱炭素化に貢献されることが期待されていました。」と書いてあった。なるほど。発展途上国へ脱炭素装置を日本が建設することの意義が強調されている。

 さらに石原氏は、「もちろん国内での削減活動も継続的に実施されてはおりますが、地球温暖化対策という大きな課題のために、本事業を通じてJCM(二国間クレジット制度)パートナー国のNDC(国が決定する貢献)にも貢献しつつ、先進的な優れた脱炭素技術等の普及・展開を行っていくことが日本政府の目指すところと理解しております」と付け加えた。

 3つめの質問は、日本政府のこの事業を推進する事業者に対し支出する補助金が近年低下傾向ではないか、という点。

 これに関して二人は「そんなことはありません」と答えた。恐らく基本的にはその通りだろう。ただ昨年度(令和6年度=2024年度)の、例えば太陽光発電所建設への補助金の率は、従来最高率とされていた50%が無くなり、最高補助率は40%になっている。

 この事に関して石原氏に聞いた。彼女は「補助金は新技術に対して支払われる。太陽光発電は今や最新技術とは言えない。例えばモンゴルでもモンゴルの事業者だけで建設することが出来る。わざわざ日本が技術供与をする必要性は薄れている」と説明した。

削減量の最大50%を日本の分として評価

 最後の4番目の質問の、削減出来た地球温暖化物質の削減量は、事業を実施した日本と土地などを提供した発展途上国の間でどの様に配分されるのか、という点だ。

 答えは「日本は最大50%の削減を自国の削減分としてカウントされる」だ。

 日本が例えばモンゴルに太陽光発電所を建設した場合、その1例目では温暖化ガス削減分のうち50%を日本の削減分として評価される。2例目から4例目までは40%、5例目以降は30%が評価される。石原氏の説明だった。

太陽光発電ではこの制度で18

 この制度で建設された温暖化ガス排出削減の装置は、どれほどの削減効果があるのだろうか。

 代表的な太陽光発電で見よう。初期に二国間クレジット制度を使ってモンゴルに建設された太陽光発電をまず見る。

 モンゴルの北の端、首都ウランバートルの北220kmにあるこの国第3の都市、ダルハンにシャープと重光商事が10MWの太陽光発電所を建設、201711日から発電・売電を開始した。

 さらにシャープと重光商事は、モンゴルと中国との国境の町、ザミンウードにもZU Gegeen 15MWと呼ばれる太陽光発電所を20189月に完成、発電と売電を開始した。

 この他、ウランバートル近郊の農場にも2.1MWのものと8.3MWの太陽光発電所をこの制度を利用して建設している。

 これらを合計すると、モンゴルだけで合計50.4MWの太陽光発電がある。

 この他、タイには15件、合計72.93MW、ベトナムには16件、合計83.95MW。フィリピンには11件、合計77.83MW。チリには14件、166.1MWなど、発展途上国29カ国に総計1305.317MWの太陽光発電を20241018日までに建設・稼働している。ちなみに1305.317MW1305317kWである。

 一方、日本国内にこれまで建設されて来た太陽光発電はどれほどになっているのか。実は2023年後末(20243月末)段階で7300kWだ。

 海外の発展途上国に日本企業が建設した太陽光発電施設、130万余kWはその1.8%に上る。

目指せ10倍の18

 もっとも海外の発展途上国に日本企業が太陽光発電所を建設した土地は周囲にさらに広大な空地を抱えている。日本政府が適切な誘導策を準備すれば、現状の10倍の施設を建設することもできる。

 1.8%の10倍、18%への拡大も不可能ではないと思われる。そうなれば日本が世界に建設した太陽光発電は一定の成果を挙げたと評価できるだろう。

 日本政府の更なる決断を希望したい。我々が望むのは地球全体での温暖化ガスの削減なのだから。

 

井田 均(市民エネルギー研究所)

『地球号の危機ニュースレター』
No.535(2025年4月号)